科学研究費助成事業 基盤研究(A)19H00624 「小学校におけるCBTを活用したテストモデルの開発と能力測定の有効性に関する研究」公開サイト
CBTとはComputer Based Testingの略で、パソコンやタブレットなどのコンピュータを 使用してテストを実施するものです。企業や民間の教育関連の企業では既にCBTが活用 されており、近年学校のICT化も進んでいる中、中学校の全国調査ではCBTの実施が始まりまし た。環境的、技術的、問題の作成上の研究もまだこれからの研究分野といえます。小学校におけるCBT活用は、学力調査では限定的で、CBT活用ならではの測定方法(問 題形式・解答形式)の開発や、測定できる能力がこれまでのペーパー型テストとどのよう に異なるかの検討は全く行われていないのが現状です。
そこで本研究の目的を、「小学 校の主要教科において、Computer Based Testing(CBT)によって測定できる能力を顕在 化させ、テスト問題モデルの開発し、実際に開発した問題を使用して測定することを通し て、CBTによる能力測定の有効性の検証すること」とし、
- これまでのペーパー型テスト とCBT型のテストの違いやそれぞれの特徴
- CBT型テストならではの特徴を活かし た調査方法
- CBT型のテスト問題によってどのような能力が、どの程度測定が可能なのか
について、作問、実施、分析を通して明らかにしていきます。
本研究の目的
CBTとはComputer Based Testingの略で、これまでのペーパーテスト(PBT)を行ってきたものを、パソコンやタブレットなどのコンピュータを使用してテストを実施するものである。企業や民間の教育関連の企業では既にCBTが活用されており(SPI等)、近年学校のICT化も進んでいる中、中学校の全国調査ではCBTの実施が始まった。小学校段階におけるCBT活用は、学力調査関連でも
限定的で、CBT活用ならではの測定方法(問題形式・解答形式)の開発や、測定できる能力がこれまでのペーパー型テストとどのように異なるかの検討は全く行われていないのが現状である。
そこで、本研究の目的を、「小学校の主要教科において、Computer Based Testing(CBT)によって測定できる能力を顕在化させ、テスト問題モデルの開発し、実際に開発した問題を使用して測定することを通して、CBTによる能力測定の有効性の検証すること」とし、①これまでのペーパー型テストとCBT型のテストの違いやそれぞれの特徴、②CBT型テストならではの特徴を活かした調査方法、③CBT型のテスト問題によってどのような能力が、どの程度測定が可能なのかについて、作問、実施、分析を通して明らかにする。
研究課題の核心をなす学術的「問い」
これから教育においてICT化が進み、技術や教育環境の変化に伴い、児童の能力の測定方法も変わり、測定できる能力も変わると考えています。
【問い1 】 CBT活用ならではの測定方法(問題形式・解答形式)があるのではないか
動画を使ったり、画面上の絵などを動かしたりして、操作すること自体を評価することも可能 となるため、ペーパー型(PBT)では測定できないCBT型ならではの問題形式や解答形式が複数 種類あるのではないかと考えている。近年の全国学力・学習状況調査は、単なる知識の再生を求 めるのではなく、日常のある状況で問題解決するために、複数の知識を活用して思考する問題 が増えている(いわゆる「B問題」)。このような問題をペーパー型テストで出題する際、日常のあ る状況を説明する場合、絵や文字によって説明することになる。しかし状況を具体的に説明する ことになると、その分文字量も増え、児童の「読解力」に左右されてしまう危惧がある。 CBT型テストでは、動画再生することができるため、動画の中に様々な情報を入れ込むことが 可能となる。そのため、児童にとって理解しやすく、より実態に合った状況を設定することが可能 になり、読解力に左右されることもなくなる。
【問い2】 ペーパー型テストとCBT型のテストでは、測定できる能力が異なるのではないか
ペーパー型テストではできなかった表現(問題形式・解答形式等)が可能となるため、これまで 測定できなかったCBT型ならではの測定できる能力があるのではないかと考えている。これま で様々な能力を測定しようと試みられているが、ペーパー型テストでそれらの能力すべてが測 定できるわけではなく限界があった。それを補完するために実技技能などを測定するパフォー マンステストもあるが、多数の児童を測定するには限界があった。 CBT型テストでは、どのように操作しているかという操作の過程も測定が可能で、これまでパ フォーマンステストでしか測定できなかった思考過程や実技技能も測定が可能となる(例:理科の 実験操作を画面上で行えるため、実験方法が正しいかCBTで測定可能)。なお、このような、CBT の豊かな表現力によって測定できる能力にどのようなものがあるかは明らかではない。
【研究1】 これまで行われてきたペーパー型テストとCBT型テストの違いやそれぞれの特徴を明らかにするため、既出の全国学力・学習状況調査(小学校理科)の問題をCBT問題として動画やアニメションなどに改題して出題し、既存のペーパー型テストとCBTの結果を比較する。
【研究2】 CBT型のテストならではの特徴を活かした調査方法を明らかにするため、【研究1】の結果を踏まえ、新たにCBT用のテスト問題を専門家によって小学校理科におけるCBT型テストならではのテスト問題モデルを開発、調査する。小学校理科を設定した理由は、各教科概観した場合、多様な出題形式が一番求められる教科といえるためである。*【研究3】は研究2の内容を中学校英語で調査するものである。中学校を設定した理由は、各教科概観した場合、すでに行われている教科であることや多様な出題形式が一番求められる教科といえるためである。
調査概要(予定)
研究1
・問題趣旨を変えずに、既存の紙の学力テストのCBT化(焼き直し)の作問を行う。また焼き直した場合の課題(オリジナル問題との違い)を明らかにする。さらにUIやシステムの検討をする。チュートリアル作成、操作方法の検討(キーボードの使用、手書き入力の有無等)→完了
・600-1000名を対象に調査。同能力のグループに対して紙ベース調査群、焼き直しCBT調査群に対して調査する。児童アンケート、学校調査についても併せて調査する。
・紙の学力テストのCBTの違いについて、解答率や操作性、調査全体のオペレーションについて検討する。
研究2
・CBTオリジナル問題として全国学力・学習状況調査の問題趣旨に従って作問を行う。その際の紙ベースの作問との違い(CBTならではの「問える能力」「作問方法」「解答方法」「分析方法」を明らかにする。さらにUIや解答ログ、システムの検討をする。→第一弾として確認済み継続調査
・研究1とは別に、600-1000名を対象に調査。児童アンケート、学校調査についても併せて調査する。
・解答率や操作性、調査全体のオペレーションについて検討する。
研究代表者
寺本貴啓 (國學院大學 人間開発学部)
研究分担者(敬称略・五十音順)
有本 淳 (国立教育政策研究所 教育課程研究センター 研究開発部 )
木下 博義 (広島大学大学院 教育学研究科)
川上 真哉 (東京大学大学院)
後藤 顕一 (東洋大学 食環境科学部)
鳴川 哲也 (文部科学省 初等中等教育局 教育課程課)
久坂 哲也 (岩手大学 教育学部)
松浦 拓也 (広島大学大学院 教育学研究科)
松浦 伸和 (広島大学大学院 教育学研究科)
山中 謙司 (北海道教育大学旭川校 教育学部)
研究協力者(敬称略・五十音順)
岡田 洋平 (横浜市立上大岡小学校)
尾方 優祐 (横浜市立白幡小学校)
鼎 裕憲 (富山大学人間発達科学部附属小学校)
木月 里美 (武蔵野市立井之頭小学校)
葛貫 裕介 (東京学芸大学附属小金井小学校)
齋藤 照哉 (川崎市立日吉小学校)
志田 正訓 (筑波大学附属小学校)
鈴木 康史 (横浜市立小机小学校)
塚田 昭一 (十文字学園女子大学 人間生活学部児童教育学科)
辻 健 (筑波大学附属小学校)
德武 淳子 (川崎市立久本小学校)
肥田 幸則 (埼玉大学教育学部附属小学校)
中島 隆洋 (千葉大学教育学部附属小学校)
中村 大輝 (広島大学大学院 院生)
三井 寿哉 (東京学芸大学附属小金井小学校)
宮本 純 (大阪市立堀江小学校)
結解 武宏 (義務教育学校 長野県信濃町立信濃小中学校)
システム委託企業
Benesse コーポレーション