寺本貴啓のブログ

小学校理科_1人1台端末「端末の活用自体が目的になっている」と言われないために

1人1台端末の「使い方を学ぶ」とはどういうことか

 1人1台端末時代、教師も1人1台端末の「使い方を学ぶ」ことが求められています。この「使い方」とは何を指しているのでしょうか?教師としては「授業で使いこなせる」という意味で考えていると思います。では、「授業で使いこなせる」ようになるために、何を学べばよいのでしょうか?

 端末を教育場面で使いこなすためには、①端末自体にどのような機能があるのか知り、機能を使うための操作方法を習得すること【端末自体の機能と操作方法を学ぶ】、②端末に入っている学習支援ソフトにどのような機能があるのか知り、機能を使うための操作方法を習得すること【端末に入っている学習支援ソフトの基本機能と操作方法を学ぶ】、③ある学習場面でどのように端末や端末に入っている学習支援ソフトの機能を使いこなせば学習効果が高いのか理解し、機能を使いこなせること【教科の目的を達成するための使いこなし方を学ぶ】3つのステップが必要と考えます

 これまでの利用状況によって、使ってきた機能に偏りもあり、どこからスタートかは人によって異なりますが、一度確認するのもいいかもしれません。

STEP1 端末自体の「機能」と「操作方法」を学ぶ

 ①の「端末自体にどのような機能があるのか知り、機能を使うための操作方法を習得すること」は、ChromeやWindows等の基本機能のことを指します。これまでは、WordやExcel、PowerPointなどのソフトやメール、インターネット検索など“自分が仕事で必要な機能”を使っていました。私たちは長年時間をかけて少しずつ機能を習得してきましたが、これから児童が端末を使うことになると、そもそもの「端末自体の機能や操作」を習得する必要があります。

【児童が習得したい端末自体の機能(例)】
・電源のON・OFFができる
・ドラックアンドドロップができる
・バッテリーやインターネット接続状況の確認ができる
・写真や動画が撮影できる
・写真に文字が書き込める
・文字の入力変換ができる

STEP 2 端末に入っている学習支援ソフトの「基本機能」と「操作方法」を学ぶ

  端末自体にどのような機能があるのか知り、機能を使うための操作方法を習得できれば、次は②の「端末に入っている学習支援ソフトにどのような機能があるのか知り、機能を使うための操作方法を習得すること」になります。これは、学校や自治体で異なる学習支援ソフトが使えるかどうかになります。こちらは、様々な書籍が出ており、自分の自治体で使っているソフトに合わせた書籍を購入し、どのような機能があるのか、どのように操作するのかについて学ぶことにあります。

【児童が習得したい学習支援ソフトの機能(例)】*端末やソフトによって異なる
・先生からの連絡や資料を受け取り、参照する
・作成したものを先生に送信する
・友達の制作物を参照する
・付箋機能を使う
・フォルダーにまとめる

STEP 3 教科の目的を達成するための「使いこなし方」を学ぶ

  端末に入っている学習支援ソフトにどのような機能があるのか知り、機能を使うための操作方法を習得できれば、次は ③の「ある学習場面でどのように端末や端末に入っている学習支援ソフトの機能を使いこなせば学習効果が高いのか理解し、機能を使いこなせること」になります。これは、教科の目的を達成するために端末を使いこなせることを意味します。

 単に端末やソフトを使いこなせても、教科の目的を達成するために学習場面で使いこなせなければ意味がありません各教科で使う際、端末を使うことで何を育成したいのかの目的が曖昧であったり、間違っていたり(活用自体が目的になっている)するため、留意が必要です。

 ここでの「使いこなせる」「教科の目的を達成するために」と書きましたが、 「使いこなせる」 や「教科の目的を達成しているかどうか」の意味は、端末の活用の目的が「教科の目的(指導要領の資質・能力)の達成のために活用しているのか」「教科の目的に載っていないことを目標にしていないか」を指しており、その有無(明確になっていないことを含む)で「端末の活用自体が目的になっているかどうか」を判断することができます

 例えば、理科のある授業について端末の活用をしていても、その目的が単に「結果をお互いに見せて共有する」や「大型画面に見せる」(これ自体は理科の目標にはないため)など、活用の目的が上述の②で留まっていなっていないか確認が必要ということです。

 このように、端末の活用の目的を②で終えるか③まで意識するかの違いで、「端末の活用自体が目的になっている」か「端末を有効に使いこなして、教科の学びが深まっている」かどうかが決まると考えられます。もちろん、②の操作方法を理解しないと③はできません。しかし、②のような活用自体が目的で満足して授業を進めると、例えば「情報を共有して話合わせている、”活動する姿”は見えるけど、教科として目的がずれている(教師が単元の目標を意識せず、勝手な目的や目標を設定している)」という、「活動あって学びなし」といわれかねないのです。

 一人一台端末の活用によって、これまでの学習はよりよく変わります。しかしながら、活用する教師が目的をどこに置くか(どこで満足するか)で、その学習効果も半減する(下手をするとマイナス)可能性があるのです。まずは使うことが大切です。今後「使うことが目的」といわれるような活用もするかもしれませんが、いずれそれを乗り越えて、本当の意味で「使える教育ツール」にしたいものです

 

表 「理科の目的を達成するために使いこなせている」かどうかの違い(例)

【NG】端末と端末に入っている教育系ソフトが使える(②の「活用レベル」で留まっている)【OK】教科の目的を達成するため使いこなしている(③の「教科の使いこなしレベル」までできる)
・〇〇機能を使って、結果をお互いに見せて共有する
・〇〇機能を使って、大型画面に見せる
・〇〇機能を使って、後から確認する
・撮影した2枚の写真を比較して、その違いから問題を見出す
・〇〇機能を使って、班で異なる結果をお互いに見せて共有し、様々な結果を多面的に見ることでより妥当な結果を見出す
・撮影した動画をゆっくり再生することで、一瞬で変化した自然事象を再確認することで、より妥当な結果を見出す
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