寺本貴啓のブログ

小学校理科の「見方・考え方」って何ですか?

 流行病が一般的になって2度目のお盆。今年も帰省せず、せいぜい近くのカフェで仕事をしたり、ジムに行ったりしているくらいです。去年との違いは、自分の行動の仕方が分かってきたことと、ワクチンを2回接種している安心感でしょうか。 さて今回も質問が来ているようです。

寺本 先生
寺本 先生

寺本先生がお答えします!」のコーナーでは、実際に受けた質問をもとにお答えしています。ご質問は、ページ下の「質問受付フォーム」にて常時承っています。

りか子 先生
りか子 先生

 小学校理科の指導案を書いています。4年生の「ものの温まり方」で作っているのですが、資料を見ると「見方や考え方を働かせ・・・」とあります。「見方・考え方」って何ですか?

「見方・考え方」 は、「問題解決の質」を高めるために重要なもの。「子どもが働かせるもの」ではありますが、指導する際に教師がしっかり意識しておきたいことです。

 今回の学習指導要領から、各教科で「見方・考え方」が言われています。
 簡単に言うと「教科特有の『 見方・考え方 』があり、それを働かせれば、教科の学習がより深まりますよ。だから、教科特有の「見方・考え方」を子どもが働かせられるよう、しっかりと先生は指導してね。」というものです。
 以下、質問にある第4学年「ものの温まり方」を例に、見方と考え方を分けてお話しします


見方について

 理科の場合は、物理、化学、生物、地学の4つの領域で「見方」があります。もう少し言うと、この4つの領域に依存しない、いくつかの「見方」がプラスアルファとしてあります。領域によって、ある方向から見ると、その領域のことがよりよく分かります。

物理(小学校では「エネルギー領域」といわれている)では「量的・関係的」な見方
化学(小学校では「粒子領域」といわれている)では「質的・実体的」な見方
生物(小学校では「生命領域」といわれている)では「共通性・多様性」な見方
地学(小学校では「地球領域」といわれている)では「時間的・空間的」な見方
領域に依存しないものとして「原因と結果」「部分と全体」などがあります。


 今回の指導案では、「ものの温まり方」なので、粒子領域になり、「質的・実体的」な見方を子どもに働かせたいのです。ここでの「質的・実体的」な見方とは、「何でできているかや、どのように質的に変化するか」「見えなくても存在している」というもので、例えば「材質によって温まりかたがか違う」「熱は見えないが存在している」などです。

考え方について

 考え方の方は、見方の時のように、領域で分かられているのではなく、学年に応じて主に働かせる考え方が異なります。考え方は、

第3学年:比較、第4学年:関係付け、第5学年:条件制御、第6学年:多面的にみる

 今回指導案では、第4学年ですので、働かせる考え方は「関係付け」になりますね。
 ここで「主に働かせる」といいましたが、問題解決(問題の見いだしから考察までの一連に流れ)をしている以上、本来ならばこれら4つの考え方すべてを働かせるはずです。
 しかしながら、 「主に働かせる」 というのは、第4学年の「思考・判断・表現」の評価観点に「関係付け」が関係しています。

 第4学年の「思考・判断・表現」の評価 として、「根拠ある予想ができて表現できたか」が重要になります。
今回の学習指導要領から、単なる予想をするのではなく、予想をする際には根拠が必要ということになりました。逆に言うと、「根拠がないと 『思考・判断・表現』の評価 として 低くなる」ということです。
 このことは、「予想には根拠が必要」→「根拠を言うにはこれまでの経験と関係づけて予想しなければならない」→「だから「関係付け」る考え方が必要になる」という考え方から、「主に働かせる」といっているのです。

【注意】「見方・考え方」ができたかできなかったかで評価するものではない

 以前の指導要領までは、ここで言う「考え方」ができているかどうかが「思考・判断・表現」の評価規準になっていました。しかしながら、新しい指導要領からは評価の観点にしません(やってはいけません)。時々、昔の指導案を参考にされたのか、指導案に考え方ができるかどうかで評価することが書かれているものがあります。

(古い指導要領の観点例)* 「思・判・表」の観点として

 ×「・・・比較できるように子どもを育成する。」、 
 ×「・・・問題を見出せるように比較できるようにする。」

 見方も考え方も、評価の観点に繋がる大切なことではありますが、手段であり、目的ではありませんので注意してください。

 私自身は、子どもが働かせることではありますが、子どもだけの力で自然にできるものではないため、どちらかと言えば「教師側の指導の留意点」という位置づけで考えており、「見方・考え方」を以下のように考えています。

見方:子どもが対象をよりよく見るための方向性&子どもに見方を働かせる上で教師が意識すべき視点。
考え方:「問題の見いだし」「根拠ある予想」「検証計画の立案」「より妥当な考え」という思考力の育成をする上で、子ども自身が考えやすくなるための、たくさんある教師の指導ポイントのうちの1つ。

【参考】「指導と評価の一体化」のための学習評価に関する参考資料 *評価規準の作成方法が書かれています。

https://www.nier.go.jp/kaihatsu/shidousiryou.html

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