寺本貴啓のブログ

小学校理科三観点の評価、29年度版から評価の仕方はどのようになるのか?

 若々しく見えるので、私は最近白髪染を始めました。そのため、白髪が髪の根元に目立ち始めると美容院に行きます。暑くなってくると、髪の伸びが違うようで、そのペースが早いように思います。植物も動物も季節によって成長が違うのでしょうか? さて、今回も質問が来ているようです。

寺本 先生
寺本 先生

「寺本先生がお答えします!」のコーナーでは、実際に受けた質問をもとにお答えしています。ご質問は、ページ下の「質問受付フォーム」にて常時承っています。

りか子 先生
りか子 先生

新しい学習指導要領では、評価はどのようになるのですか?

 新しい学習指導要領では、三つの観点で評価します。観点の中身が大幅に変わったので、評価の仕方やそれに伴った授業づくりの方法が変わるので、早めに理解しておきたいですね。

寺本 先生
寺本 先生

 29年度版の学習指導要領から、どの教科も資質・能力の三つの柱で統一されました。それに伴い、評価も三つの観点で行うことになり、小学校理科においては、「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」の三つの観点になったわけです。以下、29年度版の学習指導要領からこの三つの観点の評価がどのように変わるかについて説明します。

1.「知識・技能」の評価

 「知識・技能」の評価は、「知識」と「技能」に分けて考えていきたいと思います。

 まず「知識」についてですが、こちらは前の指導要領と考え方は大きく変わりません。覚えなければならない内容を理解しているかどうかで評価します。指導案では、次や単元の最後で習得しているかどうか判断すればいいですし、テストでも簡単に確認できます。

 「技能」については、①実験器具を使う技能、②実験結果をまとめる技能、の2つを指します。なお、考察をまとめることは、思考に入りますから技能ではありませんし、単にノートが綺麗に書けるということも違います。なお、①実験器具を使う技能の方は、新しい実験器具が出た際に使う場面で判断したいです。なお条件制御は、考え方になるので評価はしませんが、実験方法の構想としてトータルで判断したい。

2.「思考・判断・表現」の評価

「思考・判断・表現」の評価は、「問題解決の力」がついているかどうかで判断され、学年によって主に評価する力が異なります。「問題解決の力」は、第3学年「問題を見いだす力」、第4学年「根拠ある予想や仮説を発想する力」、第5学「解決の方法を発想する力」、第6学年「より妥当な考えをつくりだす力」になっています。

(1)問題を見いだす力

 問題を見いだす力は、主に第3学年で評価する観点で、「教師が導入を工夫することで、子供自身に問題を見いださせる」という、教師の「子供主体の考え方」が重要になります。これまでの指導要領では、知識習得が重視されていたため、以下のようなダメ事例のように子ども自身に問題を見いださせなくても、なんとかなりました(20年度版までは「ダメ事例」ではなく、29年度版からダメ事例になる)。しかし、これからはこのようなダメ事例は明らかにおかしいということになります。

ダメ事例1 「事象を見せ、一部の子どもの考えだけで学級の問題をつくる授業」・・・教師が教科書に載っている問題を引き出すために、導入で使う事象を工夫し、一部の子ども考えを発表させて、その発表から学級の問題を紡ぐやり方。 これまでも子ども主体で問題づくりをしたいと思っている先生が実践している方法です。これまでの指導要領では、気の利いた「良い先生」が実践していた方法です。しかし、29年度版からはこの方法には「子ども個々の問題を見取ることができない」という点で問題があります。

ダメ事例2 「教師が教科書に書かれている問題を提示してしまう授業」・・・教師が教科書に載っている問題をそのまま提示し、子どもに問題自体考えさせていないやり方。この方法は、本来理科では子どもの疑問から問題解決をすることが重視されてきたにも関わらず、「教師主導」といわれるやり方です。内容によっては子どもの疑問から問題解決できないものもありますが、常に教師主導であるダメ事例です。 29年度版からはこの方法には「子ども自身の問題から問題解決をしておらず、主体性を重視していない」「子ども個々の問題を見取ることができない」という点で問題があります。

ダメ事例3 「最初から教師が知識を教えて、実験に入る、帰納的な授業」・・・問題を子ども自身に考えさせることが大切なのに、知識を教えてしまうことで、本来子どもから問題が出せていないことを指します。 最初に子どもに知識を与えて、あとで考えさせればいいと思っている先生が実践している方法です。これまでの指導要領では、考える活動を設定し、子どもの考える姿があれば思考の評価が可能でした。しかし、29年度版からはこの方法には「子ども個々が問題の見いだしをしているかどうか見取ることができない」という点で問題があります。

 このような事例では「学級としての授業は進みます」が、「子ども一人一人が『問題を見いだしたかどうか』評価できない」ことになります。子どもに一人一人のギモンを、まずノートに書かせないと子ども個々がどのような問題を持っているかどうかわかりません。先に学級で一部の子どもを当てて問題を作ってしまうと、子ども一人一人の問題を見取ることができませんよね?

 そのため、これから指導案を作成する場合は、学級の問題を設定する前に、①子ども一人一人が自分のギモンをノートに書く場面、②子ども個々がノートに書いたギモンを教師が当てて発表させ、そのギモンを紡いで学級の問題にする場面、の2つを設定しなければなりません。そして、子どもが自分自身で問題を見いだしたのかどうかで評価の判断をすることになります。

(2)根拠ある予想や仮説を発想する力

 根拠ある予想や仮説を発想する力は、主に第4学年で評価する観点です。これまで予想をする際に、「○○だと思う」「○○になりそうだ」など、予想だけ行っていたものを、しっかりと根拠を付けるようにしましょうということです。これまでも予想の際に理由を聞いていたこともあったと思います。しかし、これまでは教員によって根拠を聞く人も聞かない人もいましたし、指導要領上必ずやらなければならないというところまでは言われていませんでした。そのため、極端な話でいえば、予想もしなくても良いですし、根拠などさらに言う必要はなかったのです。

 しかしながら、29年度版の学習指導要領からは、「思考・判断・表現」の評価の観点として「根拠ある予想や仮説を発想する」ことが入ったため、「やらなくてもよい」から「やらなければいけない」ということに大きく転換したわけです。

「根拠ある予想や仮説」は、自分自身で問題に対する予想と根拠が言えるかどうかで判断しますが、「○○だと思う。その理由は・・・。」「・・・だったから、○○だと思う。」など様々な言い回しがあります。これについては、話型のように型を言わせる練習をすることが重要なのではなく、言い回しは自由であっても「自分の考え(予想)」と「その理由(根拠)」の2つが入っているかどうかという要素で考えることが重要です。

 この観点には、注意点があります。単元や内容によって、「予想の場面がないこともある」ということです。例えば、「塩酸が金属を溶かすかどうか」ということを考えても、これまでの経験がないため予想ができません。このように、「これまでに経験がなく予想できない場合」や、「予想はできるがたいした根拠がない場合」は、子ども自身に無理矢理予想をさせる必要はありません。

(3)解決の方法を発想する力

 解決の方法を発想する力は、主に第5学年で評価する観点です。簡単に言えば、「自分で実験方法を考えることができるかどうか」になります。これまでは「条件制御ができるかどうか」ということだったため、実験計画時、実験時どちらでもよかったのですが、今度は「解決の方法を発想する力」なので、実験前の場面で判断することになります。

 この観点には、注意点があります。単元や内容によって、「実験方法が子ども自身で考えられない場合がある」ということです。例えば、コンデンサでどのように充電するかなどは、単に教師にやり方を教えてもらい子どもはその通りに操作するだけです。このように、「これまでの経験で計画が立てられない場合」や、「初めて扱う実験道具を使う場合」などは、子ども自身に無理矢理実験の方法を発想させる必要はありません。

(4)より妥当な考えをつくりだす力

 より妥当な考えをつくりだす力は、主に第6学年で評価する観点です。多くは、考察の場面で、自分の予想や実験結果をもとに考察する際に、自分以外の班の結果や他者の考え、複数のデータなどをもとに、単に自分が導き出した結果から考察するのではなく、多面的にみることで客観性・信頼性・妥当性をより高めるような考察にしていくことになります。

 より妥当な考えをつくりだす力は、必ずしも考察の場面だけではありません。問題解決の過程のそれぞれの場面においても、より妥当な考えをつくりだすことができます。例えば、「自分が考えた予想は問題や予想と正対しているのか」「実験方法は問題を解決する方法なのか」などもより妥当な考えをつくりだすということに含まれると言えます。

 以上のように、各学年で主に育成する「問題解決の力」について説明しましたが、ここで申しあげたいのは「主に」ということです。「主に」ということは、他の学年の問題解決の力を育成しても構わないし、評価しても構わないということです。例えば、第3学年では「問題を見いだす力」の育成ですが、3年生であっても予想する場面はあります。そのため、第4学年の「根拠ある予想や仮説を発想する力」の育成をしてもいいですし、評価してもいいということです。

 逆に7時間扱いの授業があったとして、問題を設定する場面は毎回「問題を見いだす力」を育成しなければいけないかといえばそうではありません。毎回だとくどい場合もありますし、単元の流れとして問題を見いだしにくい授業もあるのです。その際は、「問題の見いだし」にこだわらず、別の観点で指導すべきですし、評価すべきです。

3.「主体的に学習に取り組む態度」の評価

 「主体的に学習に取り組む態度」の評価は、これまでの「関心・意欲・態度」とは全く異なります。「意欲的」と「主体的」何が違うの?(https://teramoto-lab.com/blogs/answer/a_530/)でも述べたように、意欲的は、何か事象の面白さに気づき、飛びついた時点で「関心をもっている」「意欲的」といえます。しかし、主体的というのは、飛びついて時点だけでは不十分で、「ある程度自ら問題解決が進んでいる状態」でないといけないのです。少なくとも自らの予想をもち、実際に調べ始めていなければ「主体的」といえないのです。

 このことから考えると、「自分で問題を見いだそうとしているか」「自分で予想をしているか」「自分で実験方法を考えているか」「自分で実験に取り組んでいるか」「自分で実験結果から考察をしているか」といった、活動の姿をそれぞれで評価することは、古い考え方であり、これまでの「関心・意欲・態度」と全く変わりませんのでダメ事例です。

 主体的かどうかになるわけですから、前提としては「自分事の問題意識」をもっており、さらに自分自身の予想や方法を考え、実験方法やその結果を見通している状態でなければ、「主体的」とは言えないといえるでしょう。つまり、

【実験を行うまでの主体性】
・問題を持っている(前提)+自分の予想を考えている+問題を解決する方法を考えようとしている
・問題を持っている(前提)+問題を解決する方法を考えている+実験結果の見通しをしている(実験結果の予想)
・問題を持っている(前提)+自分の予想を考えている+問題を解決する方法を考えようとしている

【実験中の主体性】
・問題を持っている(前提)+問題を解決できるまで実験を粘り強く行う

といった、問題を持っていることは前提で、複数の問題解決の過程を行っていることや、実験中では、問題を解決するまでに粘り強く調べていることなどが「主体的に学習に取り組む態度」といえるでしょう。このように、これまでは授業の最初の方で「関心・意欲・態度」を評価していましたが、これからは、授業の途中から最後では判断することになります。

 また、これ以外にも「学習したことを日常生活に適用しようとしてるか」ということもこの観点に入りますが、これは、学習後の活用問題等の場面で判断することになると思われます。

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