寺本貴啓のブログ

新学習指導要領の「問題の見いだし」のありかたを知り、これまでの授業展開を再考しよう

1.思考の評価に直結する「問題解決の力」

新学習指導要領では、資質・能力を「知識・技能」「思考力・判断力・表現力等」「学びに向かう力・人間性」の三つの柱をもとに育成することになりました。この柱の一つである「思考力・判断力・表現力等」は、これまでの小学校理科でいうと、「思考・表現」にあたりますが、新学習指導要領になるにあたり、この「考える力」の育成に繋がるものとして、新たに「問題解決の力」というキーワードが示されることになりました。新学習指導要領においては、「思考・判断・表現」の観点で評価する(成績を付ける)際は、これらの「問題解決の力」が身についていているかどうかで判断することになります。

この「問題解決の力」は、学年ごとにおもに育成する力が異なっており、第3学年では「おもに差異点や共通点を基に,問題を見いだす力」、第4学年では「おもに既習の内容や生活経験を基に,根拠のある予想や仮説を発想する力」、第5学年では「おもに予想や仮説を基に,解決の方法を発想する力」、第6学年では「おもにより妥当な考えをつくりだす力」と示されています。つまり、現行の学習指導要領では「思考・表現」の観点として、各学年で「比較(第3学年)」「関係づけ(第4学年)」「条件制御(第5学年)」「推論(第6学年)」ができたかどうかで評価をしていましたが、しい学習指導要領では、「思考・判断・表現」の観点として、各学年で「問題の見いだし(しっかりと自分の問題を見いだすことができているかどうか)」、「根拠ある予想や仮説の発想(根拠ある予想や仮説を発想することができているかどうか)」、「解決の方法の発想(実験方法などの解決の方法を発想することができたかどうか)」、「より妥当な考えを作り出す(例えば、考察を書く際は複数の結果に基づいているなど、より妥当な考えをつくりだすことができたか)」、ができたかどうかでおもに評価をすることになります。なお、これらに「おもに」と記されているように、示された学年以外での育成が重要であることは言うまでもありません。

2.「問題の見いだし」の評価を考える

第3学年では、「おもに差異点や共通点を基に,問題を見いだす力」という問題解決の力の育成に力を入れることになることを述べました。新しい学習指導要領の「問題解決の力」では、“思考・判断・表現”の観点で「問題を見いだすことができているかどうか」を、児童自身の力でできたかどうかで評価をすることになるわけです。現行の学習指導要領の「問題解決の能力」では、“思考・表現”の観点で「物事を比較して考えることができているかどうか(比較している姿や表現があったかどうか)」で評価していたことから考えると、新学習指導要領での「問題解決の力」は、評価の内容や方法が大きく異なっていくと考えられるのです。
第3学年の「問題の見いだし」の評価を例に述べると、先述のように児童自身で「問題を見いだすことができたか」で評価されることになります。第3学年の「物と重さ」では、元々同じ重さの粘土の形を変えると粘土の重さが変わったように感じる体験から、教師としては「粘土は形が変わると重さは変わるのだろうか」といった問題を見いだすことを求めたいですし、「太陽と地面の様子」では、例えば朝と昼に影踏みの活動をすると影の向きが変わっていたことから、教師としては「かげは時間がたつと形や向きが変わるのだろうか」といった問題を見いだすことを求めたいということです。
しかしこの「粘土は形が変わると重さは変わるのだろうか」や「かげは時間がたつと形や向きが変わるのだろうか」は、あくまでも教師が引き出したい問題であり、実際には問題の見いだしの場面では様々な疑問が生まれ、児童は様々な問題を作ります。教師は、児童が見いだした様々な問題を精査し「問題になっているのか」という観点で評価することになるのです。
では、第6学年の「燃焼の仕組み」の単元において「問題の見いだし」をABC評価するとどうなるか、具体的に考えてみましょう。

この絵の状況は、この場面では、密閉した容器中のろうそくがしばらくすると消えてしまうことについて、日常のもの(燃え続けているランタン等)との比較を基に、問題を見いだし、表現しようとしています。評価では、学習指導要領解説に示されている記述がB規準となります。そのため、次の図ではB評価はどのような形であれ、児童が差異点や共通点から疑問を表現すればよいと考えられます。一方A評価は、燃え続けるためには「空気の入れ替わり」「空気の性質」が関係しているというように、これから問題を解決するために、因果関係が明確になって問題に含まれていることがわかります。つまりA評価は、これから問題解決をするにあたり、検証可能で因果関係が明確である必要がある一方で、B評価は、これから検証する問題に繋がっていなくても、疑問があればよいということになると考えられます。
なお、最初はどのように問題を設定するのがよいのかよくわからない児童が大部分であるため、最初から全員が自分自身でA評価のような問題を見いだし表現させるということではありません。まずは児童個々の問題を見いだし表現する機会を設定し、自分自身の考えを確認する機会を作ります。そして、教師がコーディネートして児童それぞれが見いだした疑問や問題から学級全体の問題として作り上げていくことになります。なお、「問題の見いだし」の評価は、学級としての問題を設定する前の個人で見いだした問題の質で評定することになり、教師がコーディネートして作り出した学級の問題はA規準となる問題を示すことがよいと考えられます。

3.「問題の見いだし」の評価化で、これまでの授業展開を再考する

新しい学習指導要領では、「問題の見いだし」ができているかどうかについて評価することになると述べました。では「問題の見いだし」の評価化で、これまでの授業とどのように変わるか整理してみましょう。大きく、以下の3点が変わると考えられます。

(1)問題の見いだしを児童個々に表現する機会を必ず設定する必要性がある
(2)児童自身が見いだし表現できる問題なのかを再検討する必要性がある
(3)単元内の問題の繋がりや見いだす時期を再検討する必要性がある

解説(1)問題の見いだしを児童個々に表現する機会を必ず設定する必要性について

これまでの授業で問題を設定する際は、学級全体で進行し、一部の児童の問題を確認し、教師が良さそうな問題を学級の問題として設定するだけという方法が多かったといえます。しかしながら、これからは児童個々がどのような問題を見いだしているのかを見取り、評価することになります。そのため、これまでのように「学級で問題を見いだす」のではなく、これからはまず「児童個々で問題を見いだす」ことに重点を置くことになります。なお、それぞれ問題を見いだした後は、学級全体で共有し、学級としての1つの問題として設定することになります。
つまり、「問題の見いだし」を評価する際は、まず「児童個々で問題を見いだす」場面を設定する必要があるということになります。

解説(2)児童自身が見いだし表現できる問題なのかを再検討する必要性について

これまでの授業で“問題”として使っていたものは、授業が進めやすいようにという意図だけで作られていました。中には児童が普段言わないような言葉を使ったり、「~でしょうか」「~しよう」という、児童の問題になっていない表現を使ったりしている実践が見られました。しかし、これからは児童自身にその問題を見いだすようにするため、改めて「児童自身で問題を見いだして表現できる問題なのか」考える必要があります。児童の実態は学級によって異なります。そのため必ずしも教科書に載っている問題が学級の児童に合っているとは限らないため、あらかじめ再検討する必要があるでしょう。
つまり、「問題の見いだし」を評価する際は、まず「児童自身で問題を見いだして表現できる問題なのか」教師があらかじめ検討する必要があり、必ずしもこれまで当たり前のように使っていた問題が必ずしも児童から出るものではないため、再検討する必要があるということになります。

解説(3)単元内の問題の繋がりや見いだす時期を再検討する必要性について

授業を単元の単位で「問題の見いだし」を考えると、「次の授業へのつなぎ方」について再検討する必要があります。一般的に問題の見いだしは、授業の前半にあると思われます。しかしながら、前時に次の時間の問題を出してから授業を終える、授業の終末のパターンもあります。さらに、第5学年の「振り子の運動」のように、「ふりこの一往復する時間は、ふりこの(重さ、長さ、振れ幅)によって変わるのだろうか」という3つの問題を単元の最初に出してしまうパターンもあります。このように、問題の見いだしをする場面は単元や展開によって多様で、あらかじめどのように問題をつないで単元全体を進めていくのか再検討する必要があります。
 つまり、「問題の見いだし」を評価する際は、

①授業の前半にある場合
②次時へのつながりとして、授業の終末にある場合
③単元全体の最初の部分に複数の問題を一度に出してしまう場合 等

があり、あらかじめ単元内の問題の繋がりや見いだす時期を再検討する必要があるということになります。
最後に、以下の表に新学習指導要領と現行の学習指導要領で対比してみました。

ここまで述べたように、新学習指導要領では「問題の見いだし」を評価するに伴って、評価内容が変わり、児童の授業の方法も変わることがわかりました。今は各単元で十分に検討がされていません。時間をかけて丁寧に授業展開を検討したいものです。

教室の窓(中部版)2019年3月 東京書籍より

カテゴリー

PAGE TOP